誰が誤訳したのか? 日米共同記者会見
前回、NHKだけが誤報をしたという前提で紹介した。しかし、NHKだけでなく、朝日、読売、日経、産経がそろって、沖縄県の米軍普天間飛行場の辺野古への移設問題について「より柔軟にしたい」と誤報したらしい 誤報のまとめ。 こうなると話は全く別で、改めて検討したい。
新聞が誤報したのは29日の朝刊、つまり29日未明のオバマ大統領のスピーチを聞いてすぐに作成した記事である。政府インターネットに流れている ビデオの同時通訳は「より柔軟にしたい」という誤訳をしていない。仮にNHKの通訳がこれとは別にいて「より柔軟にしたい」と誤訳したとしても、朝日、読売、日経、産経の記者がそれを聞いて記事にしたとは考えにくい。取材には英語に堪能な記者を張り付けているはずだし、同時通訳は誤りがあり得ることを考えれば、英語版をもとにしたはずである。
では、どうして4社が揃いも揃って同じように間違えたか。もっともありそうなのが、会見後に、日本政府(多分外務省)から仮訳あるいは仮要旨と称するものが配られ、それをもとに記事を書いた可能性である。翻訳には微妙な問題があり、仮とはいえ政府版であれば、それを使った記事が政府筋に文句を付けられる可能性は低い。一方、政府にとっても、仮訳を提供すれば不都合な事を書かれる心配が少なくなるメリットがある。
この政府担当者が、基地の移転について、原スピーチの「地元コミュニティの基地負担を軽減するために」という立ち入った説明をきらい、あっさりと済ませたかったとすると、「沖縄の普天間基地の移転についてより柔軟に対応したいと思います」という文言をひねり出すことは十分あり得る。
ところが、「柔軟に」は辺野古でなくとも良いというニュアンスが入るので、明らかにまずい。あるレベル(現地の高官、外務省本省、官邸)でそれに気づき、あわてて取り消すことになったのではないか。取り消すなら、放送が一番早い。29日の朝に放送したのは、朝刊が出回る前に手を打ったという事だろう。
以上がさんげつ子の推測だが、これが正しいとすると問題点は2つある。
1. 責任の無い同時通訳が責任をとらされたこと。
2. 記者が、お上の出した資料を吟味、批判する事無くそのままたれ流したこと。
2.は報道のあり方から見て極めて問題である。
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