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8割削減とは何だったのか?  新型コロナの伝染病モデル (4)


 発症した人が他人を感染させるのが通常であるが、新型コロナは発症前の人が感染させる。PCR検査は大部分発症者を対象に実施されているから、隔離の効率は悪い。このことが、接触率削減にどう影響を与えるかを調べてみる。

 図4.1左は通常のインフルエンザ、同図右は新型コロナの場合である。忽那賢志「マスク着用による新型コロナの感染防止効果について」

コロナ図4.1


図4.1 ウィルス排出量の時間変化


左図はインフルエンザ、右図は新型コロナ。インフルエンザでは発症後に感染力のピークが来るのに対し、新型コロナでは発症後にピークが来る。

 この図から分かるように、新型コロナの場合に発症1日前くらいに感染力のピークがある。我が国のPCR検査は主として発症者を検査対象にしているので、的を外している恐れがある。この影響がどう出るのか、8割削減問題を使って調べてみよう。
 第3回ブログでは、感染力を表す $ \beta(t) $ は一定、今回は図4.2のように感染後の経過日数に依存させる。発症するまで日数として本連載(2)で述べた5.6日を使用すると、感染力のピークはそれから1日引いて、感染から4.6日にくる。細かい数字はあまり意味がないのでピーク値を4.5日にとっている。(注1)

コロナ図4.2


図4.2 感染係数 $ \beta $ の時間変化


横軸は感染してからの経過日数。ピークには $ t=4.5日 $ に到達する。


 一方、PCR検査による隔離の速さを決める関数 $ \gamma(t) $ は本連載(3)と同じく図4.3に示す形をとる。階段状に変化する位置を $ s=5 $ に取っているのだが、発症までの平均値が5.6日なので、5日~5.6日の感染者も検査で検出できるのである程度妥当な数字と思う。

コロナ図4.3


図4.3 隔離係数 $ \gamma $ の時間変化


横軸は感染してからの経過日数。感染してから5日間は隔離されず、その後平均5日の速さで隔離される。平均的な隔離日数は10日。

  $ \beta(t) $ のピーク値 $ \beta_0 $ は、基本再生産数 $ \mathcal R_0 $ から関係式
\[
\mathcal R_0 = S(0) \int_0^\infty \beta(s)\exp(-\int_0^s \gamma(u)du) ds \tag{ 再掲 3.18}
\]
を使って決定する。
 接触率の削減を行った結果は図4.4の通り(計算方法はブログ3を参照されたい)。8割削減では抑え込んでいるが、6割5分では抑え込みに失敗している。 $ \beta(s) $ の値を小さくするのだが、感染力の強い時期に隔離が行われておらず、そうした人が野放しになっていることが失敗の理由だと考えられる。
 図4.5は削減を5日かけて行ったもので、8割削減では抑え込みに成功しているが、6割5分削減では状況はさらに悪い。
 以上を踏まえると、発症前に感染させる可能性があることから、発症者を対象に検査・隔離という体制をとる以上、かなり思い切った削減策をとらないと抑え込むことができないことになる。

コロナ図4.4


図4.4 時間遅れを持つSIRモデルによる削減効果


$ \beta $ と $ \gamma $ の双方に時間遅れがある場合。6割5分の削減では感染拡大の抑え込みに失敗している。


コロナ図4.5


図4.5 時間遅れを持つSIRモデルによる削減効果 II


$ \beta $ と $ \gamma $ の双方に時間遅れがある場合。6割5分の削減では感染拡大の抑え込みに失敗している。削減を5日かけて行った場合。


まとめ


 現行のPCR検査は大部分が発症者を対象に実施され、未発症感染者を十分に隔離できない。このため、接触率の削減が十分大きくないと感染の抑え込みがうまくいかないことがある。

注 釈


(注1)


\begin{align*}
\beta(t) =
\left \{
\begin{array}{cl}
0 & (t < 2.5)\\
(t -2.5) \exp(-(t-2.5)/2) & (2.5 \le t)
\end{array}
\right .
\end{align*}
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技術系の某役所を退職後、あり余る時間を使い、妄説探索の旅へ。理系老人の怪刀乱魔。

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