fc2ブログ

8割削減とは何だったのか?  新型コロナの伝染病モデル (5)


 感染状況を知る指標に実効再生産数がある。これは一人の感染者が感染してから隔離されるまでの間に感染させる人数をその時点で評価したものである。ウィルスの感染力と社会の生活様式で基本的に定まると考えられ、感染力の強いウィルスの変異種が出現したとか、あるいは大規模な宴会を開いたというようなことがない限り、安定した値を示すはずである。
 ところが、状況にそうした変化が見られないにもかかわらず、実効再生産数が急増することがある。この場合に疑われるのは、外部からの感染者の流入である。
 今回この問題を論じる。例として、ヨーロッパのウィルスを旅行者が持ち帰ったために生じたと言われている昨年3月中旬以降の感染拡大を取り上げる。

続きを読む

新型コロナの話題  K値を使った予測


 昨年7月~8月の第2波の感染流行では阪大の中野貴志氏らが提唱した「K値」を使った予測がマスコミを賑わした。感染流行の早期収束を予想したが、大きく外した。中野氏は第3波の流行でも11月末にすでにピークを迎えたと主張したが(デイリー新潮12月3日号)、これまた大外れである。
 研究上の失敗は明日の大発見につながるかもしれないので一概に否定されるべきではない。しかし何度も世間を騒がすのは問題と思う。今回はこの予測手法を取り上げ、どこに問題があるのか述べる。

続きを読む

新型コロナの話題  2度目の緊急事態宣言


 新型コロナ感染者の急増を受けて、1月7日、関東の1都3県に対して緊急事態宣言が発せられた。 昨年4月7日に続いて2度目になる。前回、宣言発出後に事態は急速に改善方向に向かったが、今回はどうか。宣言発出後10日経過した時点での数理モデルによる見立てを述べてみたい。

続きを読む

8割削減とは何だったのか?  新型コロナの伝染病モデル (4)


 発症した人が他人を感染させるのが通常であるが、新型コロナは発症前の人が感染させる。PCR検査は大部分発症者を対象に実施されているから、隔離の効率は悪い。このことが、接触率削減にどう影響を与えるかを調べてみる。

続きを読む

8割削減とは何だったのか?  新型コロナの伝染病モデル (3)


 8割削減を打ち出した専門家会議資料によれば、日々マスコミによって報告される感染者数は接触率削減後ただちに減少に向かうのではなく、しばらく増大を続けてピークを打ちその後減少に向かう。
 この時間遅れは感染してから隔離されるまで間があくためのように見えるが、これは正しくない。実際、ブログ(2)で紹介したSIRモデルで削減問題を扱うと、そうした時間遅れは発生しない。
 現実にはSIRモデルの想定とは異なり、感染者が他者を感染させる力や隔離される速さは感染後の経過日数に依存する。特に、感染後しばらくはほとんど他者を感染させず、またPCR検査が原則有症者を対象とするため、無症状の5日程度はほとんど隔離されない。これらが時間遅れの原因である。今回のブログでこうした状況を扱えるようSIRモデルを拡張する。
 昨年の流行時に欧米でロックダウンかそれに近い措置、我が国では緊急事態宣言に伴う措置が取られたが、感染者数の減少がモデルの予期したものだったかどうかを検討する。

続きを読む

カレンダー
11 | 2023/12 | 01
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -
検索フォーム
プロフィール

さんげつ

Author:さんげつ
技術系の某役所を退職後、あり余る時間を使い、妄説探索の旅へ。理系老人の怪刀乱魔。

最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
リンク